第17回お題
上手くいかないのは部下の能力不足なのか?
会議で決まったことなのに、実行に移せない部下。問いただすと「今、準備中です」とか、「なかなか難しくて…」などと言い訳ばかり。これを改善して部下のやる気を引き出すことはできないのでしょうか?また、本当に部下の能力不足なのでしょうか?経営者の視点から考察してみましょう。
ある会議にて。テーマは「売上向上策について」
経営者:「この店はまだ新たに出店したばかりだから、とにかく集客力UPが必要だ。そのためには、美味しい料理でもてなすこととサービス力UPだと思うが、みんなどう思う?」 部下A:「そうですね、やはり、売上向上は集客力UPにかかっていますからね。そのためには料理の美味しさが決め手ですから、賛成です」 部下B:「私も同感です」 部下C:「私も同じ考えです」 部下D:「まずは認知度アップのために何かをすべきでは?」 経営者:「何かって何だ?具体的に言えないのならダメだダメ、却下!他には意見ないんだな?よし、お前達がそういうなら、そうしよう!いいな?」 部下全員:「はっ、はい!」 経営者:「では、店長、お前が責任者なんだから取りまとめておくように、わかったな!よろしく!」 店長:「はっ、はい…」
これは日常的に良く見かける会議風景ですね?
しかし、これでは、物事が進まないものよくわかりますよね。えっ、どこがって?それは…
テーマと解決策がミスマッチ
「集客力UP」は着眼点としては間違っていません。但し、「集客力UP」が目的ならば、直接的にそれに繋がる施策もセットで考えることが必要です。言い換えれば、『美味しい料理』と『サービス力UP』は飲食店なら当たり前のこと。それで終わっていたのでは何も考えていない、何も決定していないに等しいのです。事例は誌面の都合上簡易にしていますが、テーマと解決策が合致していないことを理解すべきですね。もちろん、そもそも売上向上策は多岐に渡るため、1つの要素だけ考えればいいというものではありませんが。以前お伝えした「ロジックツリー」を参考にしてみてください(バックナンバー第1回 突然、社長から言われた…「お店の収益を上げろ!」参照)。
威圧的リーダーシップでは創造性は引き出せない
特に企画会議では、通常多くの組織では部下から意見が出ないのは当たり前です。それを踏まえて、会議の進め方や司会者、意見を引き出すようなコミニュケーションを取ることが大切です。この事例では経営者が独りよがりで荒削りのアイデアを、押しつけ、それに同調させて、無理矢理合意形成に持ち込んでいます。また、部下Dの提案にも具体的でないからと自ら想像力が及ばないことを棚上げして即座に却下しています。このような方法ではいつまでたっても部下が自ら建設的・創造的な意見を言うことはできません。環境を作り上げるのも経営者の仕事です。
目的、期限、方法論を明示していない
とりあえず、部下に指示を出す場合は以下の3つを必ずセットにするコトをお奨めします。
- (1)目的:再確認の場合もあるし、裏に隠された真の目的や派生する可能性についても丁寧に説明しておくと、実施する方向感にブレがなくなります。ゴールがわかっているからこそ、再認識と納得させることが必要です。
- (2)期限:いつまでに何を考えるのかを明確に伝えないと、いつまでたっても考えているだけで具体的行動に結びつきません。「来週の会議前日までに資料にまとめて回覧し、全員が意見を手元資料に書き出して、会議に参加するように」と細く指示することは最低限必要だと思います。
- (3)方法論:これは熟練者や、企てることが大好きな部下には不要かもしれません。どのようにすればよいかを独自で考える機会だからです。しかし、多くの部下は指示待ち族であることも事実です。従って、方法論も明示して引き出しを多く持たせることでスキルアップに繋げていくことができます。
どうでしょうか?部下に責任があると思っている経営者は多いのですが、自らを省みる機会になれば幸いです。
次回は同じ問題を部下の立場から見てみましょう。
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