鹿児島で、素晴らしい人たちとの縁が重なって、お店をオープン。

カウンターに座ると、バックバーの棚に一升瓶がズラリ！

そのどれもが芋をメインにした焼酎ばかり。

バックバーといえば、四合瓶や洋酒のボトルが並んでいるイメージを思い浮かべますが、ここでは迫力の一升瓶とそこに表現された銘柄のラベルが美しく並んでいます。

焼酎ファンには伝説のお店ともいえる「焼酎Bar　古典」。開業したのは、まだ焼酎ブームが訪れる2年ほど前の2001年6月でした。

「脱サラしましてね。自分が大好きな焼酎を愉しんでもらえるようなバーをつくろうと思いました。デザイナーさんにお願いして、まずは一升瓶を飾れるジャストサイズの棚づくりから、空間のイメージを膨らませていったわけです」

松の木を使ったカウンター席。クラシックをメインとしながらもシチュエーションによってBGMは変わります。ゆったりと焼酎を愉しむ、大人の空間です。

準備期間を利用して、鹿児島へ旅立った長屋善夫さん。有名な酒蔵さんとの出会いを通して、焼酎に詳しい酒屋さんを紹介されるなど、人から人へと素晴らしい縁が連なって店のオープンを迎えることができました。

「当時、鹿児島の酒蔵のみなさんに歓迎されたのを思い出します。ありがたいことです。不思議がる人、驚く人もいましたよ。東京で焼酎のバーをやるの？　本当に？　って言われましたよ（笑）」

オープン後、焼酎ブームに火がついて「古典」のは知る人ぞ知る焼酎バーになっていったのですね。

長屋さんのうんちくをヒントに、焼酎の魅力を再発見するディープな夜。

東京で焼酎をどうやって愉しんでもらうか──。

これがオープン当時の長屋さんのいちばん悩んだところでもありました。

そういえば昔は焼酎はクセがあるといって、敬遠されていた時代がありましたよね。

「鹿児島では焼酎はお湯割りで飲むが当たり前なんですよ。それを東京スタイルにしたいと思い、ロックでお出しすることにしたんです。現地の蔵元さんにそのことを連絡すると、『えっ！？　なにそれ？』と言って、うちの店までわざわざ見にきた人もいたぐらいです。そのぐらい、鹿児島ではお湯割りがスタンダードなんです」

ストレートの焼酎が注がれたグラス。水の入ったグラス。そして氷の入ったグラスと、合計3つのグラスが出てきます。最初の一杯はストレートを味わい、あとはお好みで氷の入ったグラスに注ぎいれ、水などを足していただくのが「古典」スタイル。

焼酎の飲み方の提案も、お店がヒットした秘訣。さらにヘルシーブームも押し寄せて、焼酎の存在が見直されてきたという要因もありました。

「最近では、昔の人みたいに焼酎に先入観念のない世代が多くなってきましたね。自分で飲んだ焼酎ボトルを写真に撮ってブログに上げたりね。そうやって愉しんでいただいている姿を見ると、時代が変わったなぁと思いますょ」

メディアの情報を追いかけなくても、ここに来て長屋さんのうんちくをヒントにしたり、おすすめをいただくのがおいしい焼酎に出会えるいちばん手っ取り早い方法かも知れませんね。