和牛のみ、冷凍なし！本当のおいしさを味わってほしいから。

センター南、中川駅と、市営地下鉄ブルーライン沿線の飲食店におじゃましてきましたが、今回はその終着駅であり、東急田園都市線が乗り入れる始発駅でもある「あざみ野」に降りたちました。

高層マンションなどがないため空は大きく広がり、街なかには緑がいっぱい。道路も整備されて歩きやすく、行き交う人々もなんだかゆったりと人生を謳歌しているかのよう。

14年もこの街に愛されている焼肉店が今回のお店「なな亭」さんであります。

入店して驚いたのは、その清潔感。焼肉店でありながら、この街にマッチするかのように、店は磨かれ、キッチンの換気口のステンレスもピッカピカ♪こういうちょっとした地道な仕事も、人気店につながっているのでしょう。

テーブルの中央に、丸い焼き台スペースがくり抜かれ、炭火で炙り、無煙ロースター機能がついています。

肉・内臓ともに、芝浦の精肉店からの直送買い付けです。だから、中間マージンもなく、その分、リーズナブル！

「ホルモンの鮮度には絶対の自信があります。肉は熟成させ、旨みを際立たせたものを提供しているんですょ」

仕入れたハラミに包丁を入れながら、新井喬さんは語ります。がっちりとした体格で、野性味あふれる立ち振る舞い。さすが焼肉店の店主！

「いや、ろくにスポーツもやっていない、単なるデブです（笑）。うちはすべて和牛にこだわり、いっさい冷凍品はお出ししません。その部位の本当のおいしさを味わっていただきたいので、肉はタレではなくシンプルに塩とわさびで、内臓系はさまざまな薬味で召し上がっていただきたいですね」

焼き肉といえば、白いごはんを食べたくなりますよね。「なな亭」さんでは、オーダーしてからそのお客さまのために炊きあげるシステムを取っています。銘柄は、長野県東御市八重原の有機栽培米。独自の方法で、約15分で炊きあげてくれます。炊きたての白いごはんに、肉汁したたるお肉を乗せて……。ありそうで、なかなか珍しい、うれしいサービスですよね。

焼き肉は自由度が高い。ものすごく面白みのある仕事！

経営者として、若いスタッフの育成にも積極的に取り組んでいる新井さん。ただ、和食やイタリアンなどを志す人は、やりがいを感じながら働いているのに対して、焼き肉というジャンルになると、どうもモチベーションが上がらない人が多いのではないかと、現状を分析しています。

「その理由はたぶん、焼き肉業態では料理のスキルアップが望めないということだと思うんですよね。魚をさばいて、美しく盛りつける職人とか。究極のソースをジビエに合わせるシェフとか。ピッツァイオーロで生きていくゾとかね。そういう将来像を、焼き肉業態では見いだせないのかもしれません」

しかし、と新井さんは言います。焼き肉はものすごく面白みのある仕事だと。

「たしかに他の料理ジャンルは素晴らしいですよ。でも焼き肉は、自由度の高さが最大の魅力だと思っています。しきたりや決まり事が少なく、なんでもありの業態なんです。タレでも、塩でも、薬味でも、店主の考えで、肉の食べ方を提案できます。和食みたいに盛りつけてお出ししても喜ばれます。合わせるお酒の種類も自由で幅広い。カクテルにも合うんです」

オーダーを受けてから炊きあげるごはんも、焼き肉だからこそなおさら引き立つサービスですよね。

「最近うちではじめたのが旨辛カルビラーメンです。丁寧にダシを取り、カルビ肉を食べやすくカットして、製麺所から麺を仕入れての自信作。〆のメニューとしてご好評いただいています。考え方によっては、メニューは無限大じゃないかな」

新井さんは、韓国料理としての焼き肉ではなく、和食としての焼き肉をコンセプトにしており、街の他のジャンルの飲食店経営者たちとも積極的に交流しているそうで、今後も新しいアイディアがカタチになってきそうで楽しみ♪

あざみ野という緑溢れる新興住宅街で、焼き肉に少しずつ新しい息吹を吹き込んでいる「なな亭」。

こんな素敵なお店が存在しているあざみ野の人たちがうらやましい！と感じた日なのでした。