営業時間もメニューも、地域が求めているものを取り入れながら。

「焼肉いたみ新宿店」の営業時間は、18時から翌朝6時まで！（火～土）。

経営者の伊丹孝元さんは、夕方5時の営業時間前には現場に入り、朝6時までホールに立ち、サービスをします。長丁場ですよね。

焼肉が大好きだからでしょうか。肌つやもよく、元気そのもの。ハラミ、イチボなど、稀少な部位の塊を抱えると、自然な笑顔がこぼれます。

「でも、二十歳のころは築地の魚卸で働いていたんですょ（笑）　深夜に起きて、市場内では頬に冷たい風を浴びながらターレー（ターレットトラック）に乗ってたくさんの魚を運んだりしてね。魚について勉強をつづけて、将来はフグを扱う飲食店を立ち上げようなんて思っていました」

人生のターニングポイントは、友人の焼肉店で食べた肉のうまさ。

「毎日魚をさわっていた反動からでしょうか、牛肉が衝撃的にうまかった。それで、その店に入って修行することにしたんです。4年間、しっかりと牛肉と焼肉店の運営について学ぶことができました」

池袋に第一号店を立ち上げたのが2010年。2014年には二号店を新宿にオープンさせました。

繁盛店になった秘訣は何でしょう？

素材はすべて和牛のA5。タレもキムチもすべて丁寧につくった自家製。コンロは、肉を美味しく焼けるガス火！　でも、それだけではないはず。

「オープン当初は早い時間帯が空いていて。それで少しずつ営業時間を延ばしていったんです。飲食店の店主たちが仕事帰りに立ち寄っていただけるようになって、深夜1時ころがピークになりました。で、早朝にもピークがくることが分かって。そうやって、少しずつこの地域ならではのマーケットが分かってきたんです」

覚えることも簡単だし、やってみると奥が深いのが焼肉業態。

地域のお客さまが何を望んでいるのか──。メニューにもさまざまなチャレンジが表現されています。

稀少な部位を提供するのはもちろんのこと、タンを熟成させたり、自慢のハラミを1.5センチの厚みに切ったり。つけダレに山芋を入れるサービスを展開してみたり。本日のメニューもさまざまな創作料理が並びます。週に何度来ても飽きないメニューへの工夫があちこちに。

「創作料理に関しては、しばらくお客さまの様子を見て、人気がなかったらすぐに引っ込めます（笑）。チャレンジしてみて、ダメなら潔くメニューから外し、次のチャレンジへ向かう。ダラダラとつづけない。この繰り返しです」

アイディアはどこから生まれてくるのでしょうか。

「私自身、食べ歩きが大好きなんです。休みの日とか、一日に4～5軒はハシゴします。そこで美味い料理に出会うと、それをアレンジしてつくってみる。スタッフで試食したりしてね。焼肉業態以外の飲食店に、いいヒントがいっぱい溢れているんです」

来年には新店の出店を計画している伊丹オーナー。

「渋谷とか恵比寿みたいな、グルメたちがひしめく街で勝負してみたいと思っています」

焼肉業態というと、他店との差別化をはかることが難しいようなイメージがありますが、伊丹さんはそう考えてはいません。むしろ、自由度が高く、チャンスが大きいと考えてるのです。

「魚って、種類が多すぎて、お客さまに価値が伝わりにくいところもあります。白身の好きなお客さまにギトギトの赤身を提案してもよろこばれないでしょう。でも、肉はもっとシンプルなんです。牛というひとつの種だから覚えることも簡単だし、やってみると奥が深い。それに、きちんと誠意をもってつづければ、お客さまの満足度も高いんです。焼肉の魅力をもっともっと伝えていきたいですね！」