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なかむら

第83回なかむら

2015.8.20
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中野駅でゆったりと、日本酒と割烹料理を堪能。

中野駅でゆったりと、日本酒と割烹料理を堪能。

朝10時──。築地で仕入れてきた食材をもちこみ、夕方5時からの営業時間に向けて仕込みをはじめる中村悠佑さん。気力、体力絶好調、夏バテ知らずの笑顔です。

包丁1本さらしに撒いてといった職人さんのイメージより、毎日奥様の美佳さんと和のお店を楽しく切り盛りしているさわやかな店主という感じ。

独立したのが29才! 今年33才! 若いっ。

大学を卒業してから、調理師専門学校で学び、割烹料理店で修行を積んできました。

スタートが遅い分、一日でも早く追いつけ追い越せをめざし、自分の持ち場をはやく終わらせると、先輩や親方の横についてどんどん新しい仕事を吸収していきました。

衛生の大切さ。割烹料理の技法。手間を惜しまない心。日本酒や食材の知識。店全体を感じ取る視野の広さ。そうしたことを一つひとつ学ぶ毎日でした。

「うざいやつって、思われてたはずです(笑)。お客さまや周囲の人たちに支えられ、早く独立することはできましたけど、毎日ドタバタしていますョ。築地から帰ってきて、必死で仕込みをして、オープン時間前に1時間くらい休憩できたらいいほうです」

独立当初、お店は中野新橋だったのですが、今年に入って中野駅南口に移転。大規模な再開発が進む街の中で、どんなコンセプトのお店でいこうかと考えました。

中村さんが考えたのは、本物の和食をリーズナブルに。

「いまだに中野駅周辺を探索中で、あまり詳しくないんですけどね。ただ、仕事帰りや商談で使える割烹のお店があまりないと感じました。もうひとつ、中野周辺にはハシゴで使える店がいっぱいある。北口エリアなどは、素晴らしい個性的なお店がひしめいています。ということは、うちのあとに、ワインバルに行くかもしれないし、ラーメンで仕上げたい人もいると思ったんですね。つまり、場所とニーズ、ふたつの条件をうまく結びつけられるコース料理が喜ばれるんじゃないかと考えたんです」

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楽しく使い分けられる2つのコース料理。

楽しく使い分けられる2つのコース料理。

「なかむら」は、ふたつのコース料理で構成されています。

ひとつはお任せの5000円のコース。

料理5品、お食事、甘味までつく、フルコースです。もちろん、どのひと品も割烹料理店出身の中村さんならではの技をいかした、本格日本料理です。

昨夜のお品書きからいくつかの料理を抜粋すると……。

たこやわらか煮にはじまり、ホヤ酢、とうもろこしのかき揚げなどで日本酒を一杯。鯛の椀もので一休みして、カツオ、白イカの造り、鮎の燻製焼きといった季節の魚料理が来て、ギンポウの揚げ物、〆に十六穀米のじゃこ山椒ごはん。そしてデザート! これで5000円とは……。

もうひとつのコースは、一万円、じゃなく3000円のコースなのです。ここが「なかむら」スタイル。

「こちらのコースは、酒肴一揃えと名付けております。日本酒の肴を取りそろえ、おいしく飲んでいただき、ごはんものなどの〆はあえてご用意していません。ハシゴをしながら〆を食べたいというニーズのために、このコースをつくりました」

お客さまによっては、このふたつのコースを使い分けます。今夜は商談だから5000円のコース。また、友人と気軽に3000円のコースを食べてから、2次会へ出かける夜も。あるいは、ワインバーや洋食のあとに来店し、3000円コースをつまみに熟成日本酒を楽しむお客さまも。

場所とニーズに応える──。中村さんの考え方がぴたりとマッチしたようですね。

もちろん予約のとき、予算と食材を指定してより贅沢なコースをリクエストすることも可能です。

割烹の技を存分に発揮しながら、街のニーズに寄り添う。スキルと戦術がバランスよく機能している。それが「なかむら」なのではないでしょうか。

これからさらに使い込まれていく包丁の一部。いちばん下にある、重厚感のある一本は夏に活躍する鱧切りの包丁なのです。

奥様の美佳さんによる厳選された日本酒はどれも「なかむら」の料理にぴったり。濃厚な熟成日本酒も名物になりつつあります。

再開発が進む中野駅でありながら、静かに和食を愉しめる。テーブル席では商談のひとときも。この街にありそうでなかった空間です。

店舗情報
なかむら
東京都中野区中野3-40-31 スカイテル21 1F
tel.03-6382-5311
営:17:00~23:00
休:月曜日、第三日曜日(月曜が祝日の場合は振替で火曜にお休みを頂きます)
交:JR中野駅徒歩3分
<予告>次回のリレーキーワードは?
「なかむら」仕事前のコーヒータイムに「ムトウ・コーヒー・ロースタリー」

中村さんの修業時代のことを書きましたが、独立してからも気になる食材と出会うと産地まで出かけたり、美佳さんと日本酒を研究したり、知り合いのお店のキッチンまで入って料理のことを学んだりと、実はいまの方が修行時代だとおっしゃっていたのが印象的でした。さて、次のお店をご紹介いただきました。「すぐ近くにおいしいコーヒー店があるんです。仕込みが終わって少し休憩時間が取れると、コーヒーをテイクアウトしてブレイクタイムをつくるんです。ムトウ・コーヒー・ロースタリーさんをぜひご紹介したいですね」。ありがとうございます。それでは次回も中野でお会いしましょう。

 
文:高木 正人
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