ベーグルを焼いて10周年！行商で、街の仲間たちともコラボ。

下町風情の残る十条の街中で、地図を片手にウロウロしていたら、おばさんが心配そうに「どこに行きたいの？」と声をかけてくださって。ベーグルの「noRo」さんを探しているんですと答えると、「あら～♪　知っているわ。そこの道を入ったところよ。いつも遠くからお客さんが来てね、行列ができるお店なのよ～」

ランチタイムのすぐあとに到着すると、ベーグルはほとんど売り切れ状態（汗）。かろうじて残っていたふたつみっつを購入して持ち帰ることにしました。

それにしてもベーグルのお店って、めずらしいですよね。

しかもことしで、創業10周年を迎えます。いち早くベーグルに目をつけていた理由とは何でしょう。

「保育士をながくやっきて、食品のアレルギーに苦しむ子供たちを見てきたんですね。お母さんも食事管理にご苦労されていて。それで将来は、誰もが安心して食べられる、卵も油もつかわないアレルギーフリーのベーグルを提供するお店をつくりたいと考えていたんです」と店主の清水みをさんは語ります。

ベーグルって、ヘルシーな食べ物なんですね！

写真は、行商へ行く前の様子。

店内で飲食することもできますが、行商にもでかけます。自転車にベーグルをいっぱい詰め込んで、行商先である仲間のお店の前へ。

前回ご登場いただいた「さかなやST」の中西さんも、このようなスタイルで鮮魚を行商しているわけです。金曜日のお昼すぎには「noRo」さんの店頭で、鮮魚を販売することも。

「板橋・十条エリアの仲間のみなさんと、行商でコラボしているんです。お店という閉ざされた空間から飛び出し、じぶんたちが自信をもって販売できるものをお届けすることで、街が少しでも盛り上がったらいいなぁって、思っているんですョ」

安心とおいしさに、まっすぐ向き合う。経営者としても、ブレずに。

十条は大学が並ぶ文教のエリアでもあります。大学や付属病院の先生やスタッフのみなさんがランチタイムになると訪れ、ベーグルをメインにしたランチタイムを過ごします。

明るく開放的なカフェのような空間は、働く女性にとって束の間の休息には欠かせません。このエリアには意外とこういうゆったりできるカフェが少ないんですよね。

安心して食べられるベーグルをお子さんのためにいっぱい買っていくお母さんもいます。

店頭では、犬の散歩がてらにベーグルを買っていく人の姿も。下町らしく、ちょっと立ち話などしながら「じゃあ、また明日ね」と、挨拶など交わす風景にこの街ならではの人情味を感じます。

ベーグルが取りもつ、人と人との交流──。

「おしゃべりの大好きなお客さまが多いです。お客さまのお話しに耳をかたむけ、話し相手になることも仕事の一部かもしれませんね（笑）ベーグル焼いてるときなど、お相手でできないこともありますけどね」

清水さんはベーグル職人として、そして経営者としても10年を迎えました。経営の考え方について尋ねると、「品質を最優先すること」を心がけているそうです。

増税や原材料高騰のときも、品質重視を考え、悩んだあげく価格を見直すことにしました。

値上げによって一時期は、離れてしまうお客さまもいるそうです。でも、しばらくするとまた戻ってきてくれる。そんなときは、本当にうれしいとチャーミングな笑顔で語ってくれました。

「毎日、朝早くからスタッフが集まり、心をこめておいしいベーグルやランチ料理をつくっています。安さばかりにこだわると、ひとつひとつの仕事や品質に無理がでてしまうことも考えられます。安心して食べられるものを、きちんと手作りしていきたいんです。みんなでワイワイ言い合いながら、ベーグルやランチの仕込みをするとき、ものすごく楽しいんですよ。私はこの仕事が大好きなんです！」