データを取りながらうどんづくり。職人の世界を楽しみながら。

冨岡信之さんは、建設業で仕事をしてきました。ただ、子供のころからずっとうどんが大好き！その想いが少しずつ大きく膨らんできました。

「サラリーマン時代はがんばって仕事をしても、お客さんに喜ばれなかったんですね（笑）。自分ががんばることでお客さんが笑顔になれる仕事は何だろうかと。それでうどん処をはじめようと思ったんです」

讃岐うどんの本場、香川の店での修行を経て、都内の名店でも経験を積みました。

「うどん処　ごえん」のオープンは2010年。

手打ちと同じ機能をもつ製麺機も導入し、本格的な讃岐スタイルのうどんを研究しています。

手にしているのは、一次発酵中の生地。小麦粉は北海道産です。

「製麺機の機能も大事ですが、それ以前の生地づくり。とくに温度や湿度によって水分の量を最適にするのはやはり人間の「カン」によるところが大きいですよね」

毎日、仕込みのときのデータを細かくノートに取り、記録に残すことが楽しいと、うどん職人としての醍醐味を語ります。少しでも美味しいうどんをつくるために、日々ノウハウを溜めているのですね。粘り強く、マニアックで、繊細な職人の世界です。

「うどんは掘り下げるほどに、その魅力にハマッていきます（笑）」

毎日、新鮮な出汁をつくり、刺身や季節の料理も仕込みます。そこまで仕事をすると、蕎麦など他の麺づくりにまではどうしても手が回りません。

うどんに全力投球！　そんな冨岡さんのスタイルに惹かれて、地域の人々が美味しいうどんを食べに訪れます。

モチモチ感&喉ごしの滑らかさ。こころまであたためてくれる。

それではさっそくいただきましょう（笑）。

今回オーダーしたのは「自家製カレーうどん」！

出汁の表面に浮いているのは玉ねぎやトマトなどの素材。まろやかさと酸味がプラスされ、オリジナルな味わいを演出しています。思わずトッピングに生玉子を追加。

麺をすくいあげると、ツルンと滑って、あぁワイシャツに（汗）。

でも、それもまた愉し♪

風味豊かなうどんは、モチモチっとした適度な歯ごたえと滑らかな喉ごし。あとから、爽やかなカレーの辛みがしっかりとカラダをあたためてくれます。しみじみうまいなぁ。

トッピングでオーダーできる「海老天」も、しっかりとしたサクサク感で、出汁に浸しても型くずれせずにうまいっ！夏のシーズン、天ぷらと冷やのぶっかけうどんの組み合わせなんて、最高だろうなぁ。

お会計では店主としてキッチンから出てお客さまにご挨拶する冨岡さん。

「このあたりは昔、宿場町として栄えていた地域なんですね。下町のよさがいっぱい残っています。私は、地域のみなさんが日常の中で楽しんでいただけるようなうどん処をめざしています。うどんファンはもちろん、日本酒好きのお父さん、お子さま連れのファミリーなど、さまざまなお客さまに支えられているんですょ」

職人だけではない、コミュニケーションやサービスを重視する冨岡さんの考え方がそこにはあります。

「脱サラして、いざうどん処はじめてみると、仕事量は多いし、カラダを使うし、大変なこともあります。でも、がんばった分だけ、お客さまが笑顔になってくれる。そうした喜びを実感できるので、この仕事をはじめてよかったと思っています」